ファントムナイツ100
一連の騒ぎが収まると、高野が立ち上がり、マルスのところへいって両手を握った。
「まずはお礼をさせてください。娘を、恵を助けてくれてありがとう。」
「恵ちゃんのお父さん?」
「そうです。君にはなんて感謝していいかわからない。」
「あの、恵ちゃんは、いつも優しくしてくれます。だから、お礼なんて・・・」
藤波が話し始めた。
「一応、事情をご説明します。今日の4時半すぎ、マルスが、高野氏の娘さんである恵さんと、アンドロイドのユリと歩いているところへ、5人の暴漢が襲いかかりました。バットや鉄パイプを持って、襲い掛かってきたものですが、ユリ、マルスの働きで犯人グループは撃退、5人とも殺人未遂の現行犯で逮捕しました。このときの争いで犯人グループの一人が負傷しましたが、状況は明かに正当防衛と思われますので、犯人の負傷の責任を問うことはありません。」
「犯人の怪我はひどいのですか?」と玲子が聞く。藤波は玲子が心配していることを感じ取った。
「いえ、肋骨にひびが入っただけです。命に別状は有りません。それに、肋骨の損傷はユリというアンドロイドによるものと判明しています。マルスは鮮やかな当て身で気絶させています。」
「そうですか」と玲子は安堵したようにつぶやいた。そんな玲子の様子を見て藤波が続ける。
「お嬢さん、あなたは弟さんの力をご存じですね?」
玲子はためらわずに答える。
「はい」
「マルスを現場で保護したとき、例のナイフが警察の武器探知機に反応しました。先ほどのグラハム巡査が、マルスに事情を聞いたところ、マルスは、すぐに差し出しました。マルスは決して罪を問われるようなことはしていません。武器のデータの照合もせず、あなたや弟さんに不快な思いをさせて本当に申し訳ありません。私からも、お詫びいたします。」
「いえ、気になさらないでください。私はマルスが戻ってくれば、それでいいんです。マルスは、この様子だと不快な思いはしていないと思います。」と、玲子が答える。この、ある意味、脳天気な弟が、不快な思いをするとは、玲子には想像できなかった。
「ところで、マルスはなぜ、今回、ナイフを使わなかったんでしょう。差し支えなければ、あなたの考えをお聞きしたい。」
「たぶん使う必要がなかったからだと思います。素手で倒せる相手に、あえて武器を使う必要はないとおもいます。」と、玲子が答えた。藤波が笑顔を浮かべた。
「なるほど、ごもっとも。事件の被害を未然に防止していただいて、ありがとうございました。」と、藤波は席を立つと頭を下げた。
「いえ、どういたしまして。」と玲子は答える。藤波の視線が沈黙を保っているサムのほうへ向いた。玲子と一緒に、サムの母親がやってくるとは、藤波には意外だったが、先ほどの様子からして、サムの母親と玲子は親しい間柄なのだろう。
「ところで、ダグラス中佐、パートナーは、いまどこに?」
「車で待っています。」
「では、ご家族の方々は警察で送る手配をしますから、ノーマと一緒に、捜査を手伝ってもらえないだろうか。かつてのよしみで・・・」
サムは母親にいった。
「母さん、いいだろうか。」
半ばあきれたように息子を見た母親は言った。
「全く、あなたはこれを見越してノーマをつれてきたわね。いいわ、自分の任務を果たしなさい。」
高野がハンディをみて言った。
「じきに私の車が迎えにきます。みなさんは私がお送りしましょう。そうさせてください。」
「では、お言葉に甘えてお願いします。じゃあ、二人とも帰りましょう。」とアリスは、玲子とマルスを二人を促した。
よろしかったらクリックをお願いします。

最近のコメント