ファントムナイツ 第34章 迎撃 6
作戦空域へと先行するルーナのドルフィンは、揚陸艦2隻が撃沈された海域にさしかかった。
「撃沈された揚陸艦の乗組員の救助はどうするの?」とルーナが打診してきた。だが、マリナーはきっぱりと無視することを命じる。
「それは後回し! 直面している脅威をたたくのが先!」
ルーナからの返答はなかった。ルーナやマルスに無理な命令を出したことをマリナーは自覚していた。人命を尊重するルーナとマルスには、目の前の惨事を見過ごすのは酷だろう。敵の潜水艦の艦長が、単に敵前逃亡をした味方に腹を立て、撃沈したというのなら、西郷やマリナーの予測の範囲であるが、ルーナやマルスの動揺を誘うための罠だとしたら、巧妙な手だ。
「ルーナ、マルス、敵の潜水艦は直接シティを攻撃できるの。ここで叩かないと、シティが危ない。」
ルーナとマルスから作戦続行の返事が帰ってきた。シティとどちらが大事かと突きつければ、ルーナもマルスも迷うことなく、シティを選ぶはずだ。
「プロッターからの情報収集を急ぎなさい。敵の高速魚雷の発射地点の割り出しは?」
「いま、完了しました。スクリーンに出します。」
「目標潜伏海域にむけ、高速魚雷を2本、撃て。」
「了解、バッカスより高速魚雷を発射します。」
艦隊の戦闘艦は、データリンクで接続されており、目標が指示されれば、対応可能な艦船が直ちに動く。ジュピター級巡洋艦であるバッカスはマルチランチャーから、高速魚雷を発射した。
航続距離の長い高速魚雷は、敵に探知されやすいが、命中率が悪い。低速な標的であれば命中率があがるが、高速性をほこる軍艦が相手では、命中させることが難しい。だが、マリナーは直撃を期待していない。
海底を監視しているプロッターは、高速魚雷の最終誘導を行うと、高速で待避した。プロッターがフォースモーターを作動させたため、敵潜水艦は初めてその存在に気がついたが、正体をつかめなかった。
「魚雷? いや、なんだ」
だが、その瞬間、激しいキャビテーションの音に、ソナー要員は色を失う。
「高速魚雷です。こっちに向かってきます。」
すでに巡航ミサイル発射のため、発射深度まで浮上する途中にあった潜水艦は、魚雷を避けるため、急速浮上に切り換えた。高速魚雷の命中率の悪さに賭けたのである。
「あいつら、撃沈した2隻の救助活動をしていないのか? 」と、艦長はいらつきながら、ののしった。まもなく、魚雷爆発の衝撃が彼らを襲う。


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