ファントムナイツ 第36章 マルス帰還 7
プレストシティの非常事態宣言が解かれ、交通機関が正常に動き出したので、玲子は帰り支度を始めた。本音を言えば、マルスが帰るまで待っていたかったのだが、マルスがいつ帰るかわからなかったので、アパートに帰ることにしたのだ。だが、玲子が手荷物をまとめ、部屋を出ようとしたところで、ソレイユとぱったりと出会った。
「マルスが帰ってくるのよ。迎えに行こうよ。」と言いながら、ソレイユは玲子が抱えている手荷物を取り上げると、部屋のベッドの上に置いた。
「手荷物はおいていきなさいよ。チェックゲートを通れなくなるから。」
「迎えに行くって、どこへ?」
「すぐ隣の滑走路よ。」
それを聞いた玲子はあわてた。隣の滑走路といえば、軍の施設である。
「軍の施設でしょう?」
「お構いなく、玲子は身分証明に必要なハンディを持っているでしょう。それに、私が一緒なら、軍の規定も問題なし!」
ソレイユは玲子の手を引っ張り、部屋から連れ出した。玲子より体が小さいソレイユであるが、アンドロイドであるソレイユの力は強い。玲子はソレイユに逆らうことをあきらめつつも、マルスに会えることはうれしかった。携帯端末である「ハンディ」を持つ手に、思わず力が入る。
「玲子、帰ろうとしていたの?」
ソレイユはおとなしくついてくる玲子を見て、引く手をゆるめつつ言った。
「ええ、シティの非常事態宣言も解除されたし、交通機関も正常に戻るし・・・」
玲子の言葉がとぎれると、ソレイユが振り返りながら聞いた。
「ここにいるのは気が引ける? 」
「ええ」と、玲子は素直に答えた。ソレイユはにっこりと笑うと言った。
「気にしなくていいのよ。みんな、玲子にここにいてほしかったから、いてもらっただけよ。玲子がいては困るなら、どんなことがあっても家に帰すわよ。」
「本当に?」
「私は玲子に嘘は言わない。さあ、もっと、堂々として! 行きましょう。」


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