「その顔、ひっかいてやる!」
私が中学・高校の頃に遊びに来ていた「かんちゃん」は、とてもいたずら好きな女の子でした。私の母には、少し甘えたそぶりを見せるのに、私に対しては、そんな可愛いそぶりは見せません。母に言わせると、年齢が自分に一番近いとわかっているから、対等な存在としか見ていないのだそうです。
めったに私相手に笑うことがないかんちゃんが、笑うと嬉しいので、「いないいないばあ」なんか、何回でもやってしまいます。が、ある時、「いないいないばあ」できゃっきゃと笑っていたのが、急に「にたあ」といういたずらっぽい笑いにかわりました。見ると、右手が招き猫の用にスタンバイしています。
「いないいないばあしてきた顔を、ひっかいてやったら、おもしろそう(にたぁ)」と、考えているのは明白です。ですが、所詮、ゼロ歳児、そんなよちよちな動きでひっかかれるほど、私も甘くはありません。つづけて「いないいないばあ」をして、出てきたかんちゃんの右手を余裕でかわしてやります。今度は私が、「にたぁ」です。
でも、かんちゃんは相変わらず「にたぁ」と笑いながら右手を構えています。もう、「いないいないばあ」なんか眼中になく、人の顔をひっかくことしか考えていません・・・ その根性に負けました。今度はおとなしくひっかかれることに・・・
小さな手で力一杯、私の顔をひっかいた後は、とても嬉しそうでしたが、私の気持ちは複雑です。いまだったら、遠慮なくいたずらを仕掛けるほど懐いていたんだと思えるんですが、10代のころは、そこまで考えられません。とはいえ、0歳児でも、「顔をひっかいてやろう」とひらめくのだとわかって、ちょっと驚きの発見ではありました。
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