サイエンス

2009年6月14日 (日)

消えたミツバチの謎 蜂群崩壊症候群(CCD)

日経サイエンス7月号の記事です。

 ミツバチが消えると言うことは、最近よく聞かれますが、記事によると、始まりは2006年秋だそうです。アメリカ合衆国の養蜂家ハッケンバーグ氏の3000個あった巣箱のうち、半分以上から蜂が消えました。ミツバチの死骸はなく、残りの巣箱も、残っていたのは若い働きバチと女王バチだけだったとのこと。これらの大量の蜂の失踪は、2007年春には一時的には、とまったそうです。調査の結果、全米の養蜂家が同様の経験をし、30%のミツバチが失われたことがわかりました。

 原因として考えられたのが、ダニなど寄生虫による影響、ウイルスによる病気、農薬などの科学物質の悪影響等ですが、一つの原因では決め手にはならず、CCDの説明ができません。記事を書いたペンシルベニア州立大学のD.コックス=フォスター氏とD.ファンエンゲルスドープ氏は何か複合的な原因によって生じていると考えているようです。

 原因は特定されていないので、決定的な対策は見いだされていないようですが、古い巣箱をガンマ線で消毒する(ウイルス等のDNAを破壊する)など効果があるとされていますが、別の身近な方法で、ミツバチの大量死をある程度防いだ養蜂家もいるようです。つまりミツバチの健康を保つという素朴な方法です。本来、受粉のため使われるミツバチは、単一の植物の蜜を集めますが、それではミツバチの栄養状態は悪くなるというのです。そこで、栄養状態を改善するため、単一栽培地に生け垣をもうけ、ミツバチが多様な花から蜜を採取できるように心がけたところ、大量死をある程度防げたと言います。原因はともかく、生物多様性という手法で、解決の糸口を探すというのも、いいのかもしれません。

2008年6月11日 (水)

無人輸送機HTV

 国際宇宙ステーションに、日本の実験モジュール「きぼう」の取り付けが行われました。従来の宇宙ステーションの他のモジュールに比べ、格段に音が静かだとか。もしかしたら、実験モジュールとして使われるほか、乗組員の休憩場所としても使われるかもしれません。日本の技術もすごいですね。
 さて、スペースシャトルにも退役が迫る今、日本独自の無人輸送機HTVが開発されています。全長10m、予圧された貨物室と、宇宙空間にさらされる区画をもつ、宇宙用トラックと言った趣があります。総重量16t、これを打ち上げるロケットも改良され、H2Bとなり、1段目ロケットの改良が行われます。従来メインエンジンはLE-7Eが1機であったところを2機に束ねて使用し、燃料を多く積みます。
 2010年にスペースシャトルが退役すれば、この無人機の果たす役割が重要になってくるでしょう。もっとも、大気圏突入能力はなく、不要物資を積み込んだ後、大気に突入させ焼却するという使い捨ての輸送機です。
 それでも日本の宇宙技術はここまで来たかと言う気がします。今後は是非、再突入可能で、宇宙から物資も持ち帰ることができる無人輸送機を開発してほしいですね。
 出典は日経サイエンス7月号です。

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2008年6月 8日 (日)

プランB 3.0

 昨日、金沢市で開催された2008環境フォーラムin金沢に行って来ました。レスター・ブラウン氏の講演もあって、プランB 3.0のことを知りました。講演内容がおもしろかったので、書籍も買いました。(サインもいただきました。サイン入りの本なんて、手塚治虫氏にいただいたサイン本以来、20数年ぶりです。)
 プランB3.0の書名の意味は、現状の市場システムは、化石燃料の消費によるリスクを考慮しないため、潜在的なリスクを増大させ、持続可能な発展は望めない。このような市場システム(プランA)に代わり、持続的発展を目指すのがプランB、そのバージョン3.0という意味のようです。レスターブラウン氏は、市民によるボトムアップによる変革に期待されているようでした。

 書籍はまだ全部読んではいませんが、石油資源に頼る市場システムの危機的状況や現状の不安。それに対するエネルギー施策、人口の安定、都市計画と多岐にわたる内容でありながら、わかりやすい文章です。


 地球温暖化という言葉が日増しによく聞かれるようになってきました。北極海の氷の減少、氷河の崩壊と話題になっています。一方で、アメリカで原子 力発電所の建設プランが立ち上がっているとニュースで聞きます。原子力発電は二酸化炭素を出さないということで、期待が集まっているということですが、私 はどうかなと思います。日本のメーカーは、ここがビジネスチャンスと力を入れているとも聞きますが、あっさり、方針が変わったら、どうするんだろうと 心配になります。
 というのは、いきなりバイオエタノールという方針を出してきて、穀物市場の高騰を招き、バイオエタノールの生成に膨大な化石燃料を使うと いう本末転倒な政策を実行したブッシュ政権が、まもなく終わります。ブッシュ政権はアメリカ史上最悪という高い不支持率で幕を閉じるかもしれません。ゆえに、いま、アメリカで起きていることが、これからも続くとは限らないと私は思います。

 一方、欧州ではエコビジネスに投資家の関心が高まっています。原子力は百歩譲ってもエコビジネスの投資家には魅力的ではないでしょう。それに、再生可能な自然エネルギーの技術が数々と現れています。原子力が唯一ではないことを忘れて、突っ走っていると、思いもかけないところでずっこけるんじゃないかと、思ったりします。生態系も多様性が重要なように、技術にも多様性が必要ではないでしょうか。

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2008年5月20日 (火)

サイエンス6月号

特集は「宇宙の歴史が消える日」
宇宙が加速しながら膨張するため、いつか(およそ1000億年後)他の銀河はすべて見えなくなるという話題。太陽の寿命が、残り50億年ですから、ちょっと気が遠くなるような話です。しかも、そのころには銀河系とアンドロメダ銀河がひとつになっている(いまから200億年後にはふたつの銀河が衝突する)というのも、すごいとしか言いようがありません。宇宙の動きはスケールが大きいです。
 身近な話題ではバイオ燃料の話題(NEWS SCANの記事)
 バイオエタノールが注目されていますが、トウモロコシや大豆などの穀物市場が高騰しています。また、サイエンスに掲載された記事では、バイオエタノールは、製造工程で、作物が吸収する以上のCO2を排出すると指摘されています。この記事では、セルロースからバイオ燃料を作る試みが紹介されています。食用に適さない農業廃棄物や雑草、材木のくず、多年生の草本等のセルロースを、細菌の力でエタノールに変えようと言うものです。私は、食物と競合しない、バイオエタノールの生成こそ、意義あるものではないかと思います。

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2008年4月16日 (水)

日経サイエンス5月号

特集は革命前夜の物理学です。読みどころは市場最強の加速器「LHC」が実現する1兆電子ボルトの超高エネルギー世界と、それを実現させる基礎技術です。陽子ビームを光速の99.999999パーセント以上まで加速させ、2本のビームを衝突させる。その際に生じる1秒あたり1億近いデータの中から、重要な100あまりのテータを選別し、保存する。高度なコンピュータシステムなしにはできない芸当です。今年夏には稼働を開始し、素粒子物理学に新しい知見をもたらすことになるかも知れません。楽しみです!
 あなたの体に潜む他者という特集は、自分の体の中に母親の細胞が存在する、または母親の体の中に、自分の子供の細胞が存在するという、マイクロキメリズムを取り上げたものです。それがもたらす病気や、逆にある種の病気のリスクを抑える働きをしているという研究です。母親が子供を胎内に宿している間に両者の細胞が互いの体に潜むとされていますが、考えてみれば不思議な話です。母親にとっては子供は自分とは異質なもの。ですが免疫細胞はそれを他者とは認識せず、胎児は母親の胎内で育ちます。生命の神秘です。このメカニズムが明らかになれば、ある種の病気の治療方法等が確立されていくかも知れません。
 表紙には記載されていませんが、もう一つ関心の高い特集があります。地球温暖化がもたらす極域にある氷床の崩壊を取り上げた特集、「なだれ落ちる氷床」です。著者であるコロンビア大学のベル氏は現在の気候モデルの海面上昇の予測は極域氷床の影響を過小評価していると危惧されています。
 その他、特集ではありませんが、草から作るエタノールの記事があります。バイオエタノールが注目されていますが、原料のトウモロコシなどが、食物と競合するため、価格の高騰などが引き起こされています。この記事ではスイッチグラスという多年生の草を刈り取り、そこからエタノールを生成する研究が取り上げられています。このスイッチグラスを原料とすると、トウモロコシから生成する場合と比べ、飛躍的に大きなエネルギーが得られるというものです。スイッチグラスは食料と競合しません。また、多年生植物であるという利点もあります。この研究が、早く実用化に至ればいいと思います。

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2008年2月24日 (日)

サイエンス4月号

 表紙を見て、おもわず「あれっ?」と思ってしまいました。

 特集「太陽エネルギーへ 米国の大転換構想」とあるからです。私の頭の中では、アメリカの現在は、原子力発電所の建設ラッシュというイメージがあったため、エネルギー政策を変えたのかと早とちりをしてしまいました。

 記事の内容は、2007年11月号の太陽光励起レーザーとマグネシウム精錬によるエネルギー循環とはまた別の考え方による、太陽光発電とエネルギー循環の手法です。

 太陽電池もしくは太陽熱を使った発電と、直流による送電施設を設置。昼間の余剰電力でコンプレッサーを動かし、地中の空洞等に空気を圧縮してためておき、その圧力と、天然ガスによる加熱でタービンを駆動し発電するというものです。

 太陽光励起レーザーによるマグネシウムによるエネルギー循環は、マグネシウムをつかった発電機が、自動車に搭載できるほどコンパクトですが、こちらの方は、かなり、施設規模が大きいので、設置面積が確保できるところでないと、ちょっと採用は無理なのではと思います、そういうところが、アメリカ的だなと思います。

 今号から、短期連載で日本の「カミオカンデ」が掲載されます。2002年のノーベル物理学賞を受賞した小柴教授による、カミオカンデが物理学にもたらした功績と、核子崩壊実験のことが書いてあり、おもしろい内容です。ニュートリノによる宇宙観測と、素粒子の理論研究に修正を促したカミオカンデの功績は大きいと思います。

2008年2月10日 (日)

サイエンス3月号

 日経サイエンス3月号の特集は「地球にエイリアン」、「ガンマ線宇宙望遠鏡GLAST」等です。表紙の写真は「地球にエイリアン」の特集にある、もしかしたら、いるかもしれないと想像した、二つの核を持つ細胞生物です。特集ではそれらの特殊な生き物の生命圏を「シャドーバイオスフィア」と呼んでいます。これらの生命が見つかったら、興味深いことになるでしょう。

 3番目の特集では暗黒エネルギーを解明しようとする取り組みに、日本のすばる望遠鏡が挑むというものです。

 また、地球温暖化や環境保全というテーマでは「排出権取引を行かす道」「人間のための自然保護」という興味深い特集もあります。CO2排出権取引については、EUでも行われていますが、それらが抱える問題点についても記述されているのは非常に興味深いです。制度の悪用というのは、いつの世にも、さけられないもののようです。

2007年12月27日 (木)

サイエンス2月号

 日経サイエンス2月号の特集は「変わる核の脅威」です。増える核保有国、各国が保有する核弾頭の数等、5つのリポートから構成されています。
 私にとって、もっとも興味深かったのが、5番目の項目、「議論を呼ぶ核弾頭更新計画」です。核弾頭は作ったら終わりというわけではなく、30年の耐用年数があること、それらに変わる核兵器を開発する必要性も検討されているということです。

 現在の核兵器は、将来、クリーンで有望なエネルギーとされる「核融合」を、プルトニウム原爆で引き起こしているというのは、なんと言ったらいいか、わかりません。その上、それらの核兵器を維持するため、年間65億ドルの費用がかかるというのも、理解しがたいと思います。そうまでして、核兵器を保有したいのでしょうか。

 最近の戦争を見ていて、思うことですが、ピンポイントで攻撃する精密誘導型の爆弾が多用されています。ステルス機と呼ばれるF-117も、核兵器を運用する能力を持っていないようですし、実質、F-117の任務を受け継ぐF-22も、小型の誘導型爆弾を多数搭載して、ピンポイントで、高価値目標を攻撃することを想定しているようです。そんな戦術思考の流れの中で、核兵器という無差別破壊兵器に、どのような価値があるというのでしょうか。私にはわかりません。

2007年11月10日 (土)

全地球史解読

 熊澤峰夫氏、伊藤隆士氏、吉田茂生氏の編纂による、文部省の科学研究費重点領域研究「全地球史解読」(平成7-9年)の成果をもとに、地球の歴史解読研究の考え方、方法と解読事例などをまとめたものです。
 白状しますと、3.3 月-地球力学系の潮汐進化に記述される数式の意味は、さっぱり理解できません。なんとなく、こういうことが解かるのかという程度です。とは言うものの、地球の進化と生物の進化を関連させて読むことができる、実に楽しい本です。
 楽しいとはいうものの、現在の私たちの未来を考える上で、地球の歴史上に起こった環境変化や、生物種の大量絶滅を科学的に見ることは重要なことだと思います。熊澤氏が語る「全地球史解読計画」の2つの側面、「科学として現在を含む全歴史を読み解く」「われわれが未来を生きる知恵を引き出す」は、地球温暖化や生物多様性の維持を考える上でも重要なことではないかと思います。
 価格は7400円ですが、購入してから数年たつのに、いまだに読んでみたくなる本なので、私にとっては十分過ぎるほど、元は取っていると思います。

2007年11月 9日 (金)

農業革新の決め手? 多年生穀物

日経サイエンス11月号の記事です。著者はJ.D.グローバー氏、C.M.コックス氏、J.P.レガルド氏です。

 内容は従来の、一度植えたら収穫して改めて植え直す単年生の穀物栽培から、一度植えたら、何回か収穫できる多年生の穀物栽培へと切り替えるメリットについてかかれています。
 なぜ穀物栽培は単年生生産が多いことについては、農業の起源にあるとし、人類が単年生のものを改良してきた結果だと考察したうえで、自然の草には多年生のものが多く、それは環境として安定しているとしています。
 多年生の穀物栽培のメリットとして、根が深く張ることから、1年を通じて土壌浸食が起こりにくい。毎年、植え替えが必要ない。穀物を実らせる季節意外にも、1年を通じて生命活動をしているため、炭素を地中に固定する量が単年生の作物より多い等をあげています。
 この記事の中で作付け面積トップテンとして、
 1位 小麦 17.8%
 2位 米  12.5%
 と、米が2位にランクインしています。
 ここから、先は記事にはない、私の考えです。もし、稲が多年草になったらどうなるか。
  今、不耕起栽培を試みる農家がおられます。水田を耕起せず、稲を作付けするというものですが、生物の多様性が増すという特徴があります。ただ、耕起しない ため、通常の田植機が使えず、植える力が強い田植機を使わなければならないということで、それがデメリットということでした。もし、米が多年生になった ら、そのデメリットは低減します。さらに、冬期湛水と組み合わせれば、渡り鳥の越冬地における、えさ場になるかもしれません。
 デメリットとして は、多年生穀物は、気候が生育に適すると活動を始めるため、田植え時期を調節することによる収穫期のコントロールができないかもしれません。開発された品 種によっては収量も減るかもしれません。また、冬期の稲の生活に不可欠とあれば、冬期の農業用水も確保しなければなりません。しかし、農業の環境保全への 効果、国土保全の効果は増すと思います。私は、農業が作物の生産という機能で経済効果を計るのではなく、環境保全、国土保全への効果等の公益としての効果 を考えなければならないと考えています。
 そうした視点でみると、多年生の穀物生産は必要な技術革新ではないかと、この記事を読んだとき思いました。

 農業の環境保全への取り組みを紹介する「環境の時代を迎える世界の農業」(日本生態系協会が発行)によると、欧州の農業環境活動に関する助成では、多年生の穀物を栽培する場合は、1haあたり900ユーロが助成されるとあります。私はこういう助成はいいと思います。